気になる本づくりの現場を訪ねて・新日本紙工編【後編】

photo  YUKO NAKAMURA
text ミモザブックス編集部

好評発売中の『魔女のカレンダー』(万城目学)。著者ならではのちょっと不思議でやさしい作品世界と、それに調和する美しい造本が話題になっている。今回製本をお願いしたのは仙台の新日本紙工株式会社。業界でも指折りの高い技術を誇る現場を訪ねた。(前編はこちら

次に表紙を貼る作業を見せていただいた。

表紙はロンニックというクロスを使っていて、皮のような手触りが特徴。名久井直子さんのデザインがクラシカルで可愛く、更にそれを箔押しにすることで上品な華やかさも加わった。深い紅に金色の箔が映えるデザインだ。

表紙の箔押しも新日本紙工さんでお願いしたのだが、本当に綺麗に仕上げていただいた。

後ろに見えている機械で行う工程を説明していただいているところ。左手前の裸の状態の本を機械の下部から押し上げ、表紙を貼り付けていくそうだ。

写真だとちょっと分かりづらいが、すごいスピードで貼られていく。
そして、表紙が貼られた本が続々と流れてきた。

赤と金のバランスが美しい。

完成が近づいてきたが、まだ仕上げの作業があった。
本をプレスして反らないようにする。

微妙な加減で仕上がりが変わってくる。ここでも職人さんの経験と技術を感じた。

ほぼ完成! なんて可愛い本なんだ……。

この後、人の目で問題ないかチェックされるとのことだったが、佐々木さんと職人さんがすぐにチェックせずにはいられない様子なのが面白かった。私には分からないような細かい部分も気にされていて、仕上がりの美しさはこういう姿勢から生まれるのだなと感じた。

こんなに丁寧に細やかに作業いただいて、なんて幸せな本なんだろうと実感する一日だった。新日本紙工のみなさん、ありがとうございました!

それにしても本当に美しい本にしていただいた。名久井さんの装幀と携わって下さった職人さんたちの技術の結晶なので、ぜひ実物をご覧いただきたい。万城目さんの描く、少し不思議でノスタルジックな世界とのリンクをお楽しみいただけるはず。

【旅のよりみち】

見学の後にちゃっかり市場にも立ち寄った。

美味しそうな地元の海産物に大興奮。あれこれ新鮮でお買い得で、新幹線に乗るのでなければもっと買い込みたかった。

ぷりぷりの牡蠣と鰤を飲むようにぺろりといただいた。
その後、駅前に戻って抜かりなく牛タンも。

仙台の旅、最高!

関連情報

2024/07/20発売

魔女のカレンダー

万城目学