気になる本づくりの現場を訪ねて・新日本紙工編【前編】

photo  YUKO NAKAMURA
text ミモザブックス編集部

好評発売中の『魔女のカレンダー』(万城目学)。著者ならではのちょっと不思議でやさしい作品世界と、それに調和する美しい造本が話題になっている。今回製本をお願いしたのは仙台の新日本紙工株式会社。業界でも指折りの高い技術を誇る現場を訪ねた。

夏のある日、カメラマンと二人、新幹線で仙台を目指した。製本作業の現場を見学させてもらうのが目的だったが、実は個人的にはもうひとつ。担当して下さった佐々木さんにお会いしたいという気持ちがあった。

元々は装幀を担当していただいた名久井直子さんからのご紹介で、新日本紙工の方とお仕事をするのは今回が初めて。佐々木さんとはメールと電話でのやり取りを重ねていたが、終始丁寧で物腰柔らかな方だった。会社を立ち上げて間もない私に対して、ここまで丁寧にやり取りして下さるなんて……といつも感激していた。

そんなわけでワクワクしながら仙台へ。いつも思うが、東京からだと距離感がバグるくらいすぐ着く。仙台駅からタクシーに乗り、到着! 

佐々木さんが迎えて下さった。

実は佐々木さんは新日本紙工の社長さん。今回は社長自らご担当下さっていたのだった。ご挨拶を済ませて早速、中をご案内いただいた。

広くて整然として、綺麗な作業場。作業の流れをひと通り見せていただき、『魔女のカレンダー』の製本途中の実物と対面した。

この時点では発売前だったので、こうして製本していただいている様子を見られて感慨深かった。小さくて手のひらサイズの本が並んでいるとそれだけで可愛く見える。

この日、メインで見せていただくことになっていたのは小口、天地と呼ばれる本の側面に金箔を貼る作業。『魔女のカレンダー』は通常の単行本ではなかなか実現できない豪華装幀が特徴の本で、中でもこの三方金がポイントだった。

これが金箔。このフィルムというのかロールに熱を加えて本の側面に貼りつけていくそうだ。

輝く本が流れてきた……! 既に小口と天の部分には金箔が貼られていて、地の部分に下から金箔を貼るところだった。

きめ細やかに人の手で調整しながら作業されていたのが印象的だった。佐々木さんによると、新日本紙工は三方金の作業を得意とされているそうで、同じ機械を使っても職人さんの技術次第で仕上がりが変わってくるとのこと。

そして、圧巻だったのがこちら。

黄金に輝く本が、どんどん積まれていく。

金の延べ棒かと思うまばゆさに、うっとりした。


まだまだあるので、後編へ続く。

関連情報

2024/07/20発売

魔女のカレンダー

万城目学